大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

山口地方裁判所 平成元年(わ)87号 判決

本籍

韓国慶尚北道尚州郡尚州邑西門洞二一四番地

住居

山口県小野田市北竜王町二番一四号

ぱちんこ店経営

春岡春子こと

元月順

一九三一年一二月一五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官野島光博出席のうえ、審理し、次のとおり判決をする。

主文

被告人を懲役二年および罰金六〇〇〇万円に処する。

被告人において右罰金を完納しえないときは金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

被告人に対し本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、山口県小野田市中央町一丁目三番四五号において「プラザ」の名称で、東京都大田区北千束三丁目二六番七号において「ジャンボ」の名称で、それぞれぱちんこ遊技業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て

第一  昭和六〇年分の実際の所得金額は七、〇四六万七、九一七円で、これに対する所得税額は三、七六六万七、五〇〇円であるにもかかわらず、売上の一部を除外するなどの行為により、その所得金額のうち六、三二六万四、一二一円を秘匿したうえ、同六一年三月一五日同県宇部市常盤町一丁目八番二二号所在の所轄宇部税務署において、同税務署長に対し、右年分の所得金額が七二〇万三、七九六円でこれに対する所得税額が一三四万六、七〇〇円(実際申告税額一三九万四〇〇円)である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右年分における正規の所得税額三、七六六万七、五〇〇円と右実際申告税額との差額三、六二七万七、一〇〇円を免れ、

第二  同六一年分の実際の所得金額は一億四、七四七万四、〇六八円で、これに対する所得税額は九、一〇七万九、三〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得金額のうち一億三、三一六万九〇〇円を秘匿したうえ、同六二年三月一六日、前記宇部税務署において、同税務署長に対し、右年分の所得金額が一、四三一万三、一六八円で、これに対する所得税額が四一二万八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右年分における正規の所得税額九、一〇七万九、三〇〇円との差額八、六九五万八、五〇〇円を免れ、

第三  同六二年分の実際の所得金額は二億二、五四七万五、二五一円で、これに対する所得税額は一億二、八〇六万四、五〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得金額のうち二億四二〇万七〇〇円を秘匿したうえ、同六三年三月一五日、前記宇部税務署において、同税務署長に対し、右年分の所得金額が二、一二七万四、五五一円で、これに対する所得税額が七四四万九、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右年分における正規の所得税額一億二、八〇六万四、五〇〇円との差額一億二、〇六一万五、〇〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の

(一)  当公判廷における供述

(二)  検察官に対する供述調書三通

(三)  大蔵事務官に対する質問てん末書一〇通

一  検察官に対する池本久子こと崔久子(二通)、陳鶴春(四通)、陳学(三通)山本隆、倉本均に対する各供述調書

一  大蔵事務官に対する池本久子こと崔久子(三通)、陳鶴春(九通)、陳学(五通)、山本隆、倉本均(二通)、陳点春(三通)、陳早苗の各質問てん末書

一  大蔵事務官の

(一)  吉松隆作成の売上金額調査書二通、青色申告控除額(犯則所得)調査書、雑収入調査書、期首商品たな卸高調査書、仕入金額調査書、期末商品たな卸調査書、消耗品費調査書、減価償却費調査書、給料賃金調査書、利子割引料調査書、滅失損調査書

(二)  小田一爾作成の必要経費調査書、燃料費調査書、地代家賃調査書

(三)  山口秀之作成のみなす犯則損調査書

(四)  藤井輝行作成の青色申告の承認取消し決議書謄本

一  大蔵事務官青笹勝徳、同片岡保洋、同山根修、同辻徳雄各作成の各作成の各差押てん末書

一  大蔵事務官山口秀之、同田原郁夫各作成の各領置てん末書

一  押収してある春岡春子の青色申告書類つづり一綴(平成元年押第二一号符4)、月次損益計算メモ入袋一袋(同押号符5)、売上、仕入を書いているノート一冊(同押号符6)、手帳(一九八九年)一冊(同押号符7)、金銭出納帳(ジャンボ、58、59、60、62年分)一綴(同押号符8)、金銭出納帳(プラザ57~62年分)一綴(同押号符9)、売上ノート(プラザ)二冊(同押号符10)、売上ノート(ジャンボ)二冊(同押号符11)、業務日誌一冊(同押号符12)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官吉松隆作成の脱税額計算書(昭和六〇年)

一  被告人作成の昭和六〇年分の所得税の修正申告書謄本

一  日本銀行宇部代理店作成の領収済通知書謄本(昭和六〇年分)

一  押収してある春岡春子の所得税確定申告書等(60年分)一綴(同押号符1)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官吉松隆作成の脱税額計算書(昭和六一年)

一  被告人作成の昭和六一年分の所得税の修正申告書謄本

一  日本銀行宇部代理店作成の領収済通知書謄本(昭和六一年分)

一  春岡春子の所得税確定申告書等(61年分)一綴(同押号符2)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官吉松隆作成の脱税額計算書(昭和六二年)

一  被告人作成の昭和六二年分の所得税の修正申告書謄本

一  日本銀行宇部代理店作成の領収済通知書謄本(昭和六二年分)

一  春岡春子の所得税確定申告書等(62年分)一綴(同押号符3)

(法令の適用)

1  該当罰条

所得税法二三八条(懲役と罰金を併科)

2  併合加重

懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情最重の判示第三の罪の刑に法定の加重)

罰金刑につき刑法四五条前段、四八条二項

3  労役場留置

罰金刑につき刑法一八条

4  執行猶予

懲役刑につき刑法二五条一項

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 中根與志博)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例